なぜ保育士は不足している?原因5つと、対策に向けた国の施策を解説!

現在日本では、保育士不足が全国的に深刻な問題となっています。特に東京近郊では待機児童問題などで、メディアにも保育士不足についての話が取り上げられたこともありました。保育士不足には、待遇面や人間関係など、保育士の働く環境が関係しています。今回は、保育士不足の主な原因と、解決に向けた取り組みをご紹介します。

全国的に保育士の人数が不足している

保育士の数は全国的に不足しています。厚生労働省によると、保育士の有効求人倍率は全国で2倍を超え、東京だけなら5倍を超えると発表されています。これは、東京では保育士1人あたりに5つの求人が存在しているということです。

保育士不足によって引き起こされる「待機児童問題」

保育士の不足によって、近年、深刻な問題とされているのが「待機児童問題」です。待機児童というのは、保育施設への入所申請を行い、入所条件を満たしているにもかかわらず、保育施設に空きがないことで入所待ちをしている児童を指します。

待機児童問題の主な原因は、児童の数に対して保育士の数が足りていないことです。また、保育施設が足りていないことも原因のうちのひとつ。しかし、保育施設を増やしても、そこで働く保育士が足りなければ多くの子どもを見ることはできません。これを受けて、厚生労働省は平成29年末までに6.9万人の保育士を新たに確保する必要があると発表しています。

保育士不足の5つの原因

全国的に保育士が不足している理由には、主に待遇面に関しての問題が多いです。具体的には、大きく分けてこの5つの原因が考えられます。

・給料が低い
・業務量の多さ
・就業時間があわない
・人間関係
・責任の重さ

給料が低い

保育士不足の原因のひとつに、給料の低さがあります。下記の表は、平成27年に厚生労働省が発表した「保育士等に関する関係資料」を元に、職業別の給与額の平均を表したものです。

給与額(男女計) 給与額(男性) 給与額(女性)
全職種 329.6千円 365.7千円 255.6千円
保育士 216.1千円 239.4千円 214.4千円
幼稚園教諭 231.4千円 326.7千円 227.7千円
看護師 329.0千円 329.7千円 329.0千円
福祉施設介護員 219.7千円 233.4千円 212.8千円
ホームヘルパー 220.7千円 229.8千円 217.7千円

この表を見ると、全職種の平均給与額は約329万円なのに対して、保育士は約216万円です。この状況を少しでも緩和するために、政府は2017年度より、保育士の給与を6,000円(2%)上乗せ、ベテラン保育士は4万円の上乗せを目指しています。

業務量の多さ

保育士がこなす業務量は膨大です。一般的に、保育士は子どものお世話をすることが主な業務だと思われています。しかし、実際にはそれ以外の事務業務や、連絡帳の記入、保護者へのお便りの製作も行います。さらに、保育の現場は手書きが中心で、書類の記入や報告業務のシステム化がされていないことも、業務量が増えている原因です。

また、保育士の仕事はお遊戯会やイベントに向けての準備もあり、卒園式や入園式のある3、4月は繁忙期になるなど、時期によって業務量は一定ではありません。

就業時間があわない

保育士は基本的に週休2日のシフト制ですが、どのタイミングで休めるのかは保育園により異なります。深刻な保育士不足に悩まされる保育園は少なくないため、まとまった休みが取りにくくなっている施設も多いです。また、日々の業務量から残業になり、就業時間が長引いてしまう人もいます。

人間関係

人間関係の難しさも、保育士不足の原因のひとつです。キャリアの長い人との関係や、保育への考え方、仕事での考え方の違いで悩みを抱える人もいます。男性職員であれば、保育園は女性が9割の職場なので、居心地の悪さを感じるということもあるでしょう。また、モンスターペアレントという言葉が生まれたように、保護者とのコミュニケーションに難しさを覚える人も多いです。

責任の重さ

他人の大事な子どもを預かることが保育士の仕事です。そのため、幼い子どもの命を守らなければいけないプレッシャーは、日々の業務で感じることでしょう。また、子どもを預ける保護者からは「保育士だから安心」「保育士だからこれくらいやってくれる」といったプレッシャーをかけられることも多く、さらに責任の重さを感じることになります。

保育士不足に影響を与える潜在保育士

潜在保育士とは

出典:厚生労働省 保育士等に関する関係資料

潜在保育士とは、保育士資格を持っていても、保育園など社会福祉施設等で働いていない人のことです。平成27年度の厚生労働省の発表では、保育士登録者数は約119万人、そのなかで潜在保育士の数は約76万人存在すると書かれています。

本当は保育士職に就きたい潜在保育士たち

出典:厚生労働省 保育分野における人材不足の現状①

厚生労働省の発表によると、潜在保育士の6割は、就職のネックとなる問題が解決されれば、保育職に就きたいと考えています。また、潜在保育士たちにとってネックとなる問題とは、先にご紹介した5つの原因が多くを占めています。

つまり、保育士不足の解消には、5つの原因をはじめとした、さまざまな問題を解決することが重要です。問題をなくして、既に保育士資格を持ち、保育に対して造詣の深い潜在保育士の多くが保育施設で働くようになれば、保育業界の負担は大きく減るでしょう。

保育士不足の解消に向けた対策とは

保育士の労働環境改善のために、国や自治体は主に給料アップに向けた、さまざまな施策が発表・実施されています。その主な施策を下の5つに分けてピックアップし、ご紹介します。

・保育士処遇改善等加算のスタート
・保育士処遇改善等加算Ⅱのスタート
・保育士宿舎借り上げ支援事業
・保育士資格の試験実施回数の増加
・地方自治体による保育士の処遇改善の取り組み

保育士処遇改善等加算のスタート

出典:厚生労働省 保育士等の処遇改善の推移(平成24年度との比較)

保育士処遇改善等加算とは、保育士の給料やキャリアアップの改善に取り組んだ保育園へ、保育士の給料を上げるための補助金を支給する制度です。上記のグラフでは、実施される以前の平成24年度から見て、5年で10%、給料が上がっています。10%とは月額3.2万円の給与のプラスを意味しており、徐々に改善に向かっているのが分かります。

保育士処遇改善等加算Ⅱのスタート

出典:厚生労働省 保育士等の処遇改善の推移(平成24年度との比較)

どの職種でも給料を上げるためには、キャリアアップは欠かせません。しかし、従来の制度では役職が少ないという問題がありました。これを踏まえて、平成29年度よりスタートした保育士処遇改善等加算Ⅱでは役職を増やし、保育士がキャリアアップしやすいように改善しています。全職員一律6,000円の処遇改善に加え、キャリアアップすることで役職ごとに処遇待遇を得ることが可能です。

保育士宿舎借り上げ支援事業

給料の低さから一人暮らしをすることが難しく、別の職種に就いてしまう潜在保育士も少なくありません。この問題を受けて、1人当たり月額82,000円(上限)、宿舎を借り上げるための費用補助を行う「保育士宿舎借り上げ支援事業」が実施されています。保育士の労働環境を整えることが目的で、待機児童解消加速化プランに参加している市町村が対象です。

保育士資格の試験実施回数の増加

従来、保育士になるための保育士試験は年1回の実施回数でした。しかし、保育士の確保を目的として、平成27年度より、年2回の試験として、地域限定保育士試験が実施されています。さらに、平成28年度より、地域限定保育士試験に加え、通常の保育士試験についても年2回行われるようになりました。

地方自治体による保育士の処遇改善の取り組み

保育士は全国的に不足しているのが現状です。そのなかでも特に不足している地方の自治体は以下のように、独自の施策によって保育士の処遇改善に力を入れています。

東京都 ・平成29年度より約44,000円の給与補助を上乗せ ・区ごとにも補助を展開
千葉県
松戸市
・保育士資格保有者に月45,000~72,000円の手当支給(額は勤務年数で変動) ・保育所入所の優先度アップ。育休から復帰後は保育料が最大月27,000円安くなる(条件あり)
京都府 ・保育士に職位証明書「キャリアパス」を導入し、キャリアごとに求められる仕事内容を明確化。他の園に転職する際、これまでのキャリアを伝えやすく、活かせるようになった
大阪府
大阪市
・保育士登録後1年以上かつ保育所等を離職後1年以上経過した場合、就職準備金として40万円(上限)を貸与。(平成29年4月2日以降保育所等へ就職した保育士対象)就職後2年以上継続して保育に従事した場合は、返済免除となる

保育士不足を解消するため、保育士の処遇を改善する政策が進行中!

全国的に保育業界は人手不足に陥っており、特に東京は求人倍率5倍になるほどニーズが高いです。現在日本では、保育士が不足していることで保育園に通うことができず、新しい出会いや体験の機会をなくしている子どもが大勢います。

保育業界の人手不足は主に労働環境が原因とされてきましたが、現在は国や地方自治体ごとに保育士の労働改善に向けて制度の見直しが行われています。それにより、以前よりも給与・労働環境が改善されているため、今後も働きやすくなっていく可能性は十分にあります。また、人手を求める声が大きい今だからこそ、複数の求人の中から仕事を選ぶことが可能です。保育の仕事に興味を持っているなら、今のうちに求人を調べてみましょう。

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